4. ArcClimateは指定地点の値をどう作るか
この章では、MSMの格子データを、指定した1地点の1本の気象データに仕立てるまでの工程を順に説明します。
4.1 MSM予報値を1時間ごとにつなぐ
MSMは3時間ごとに配信され、各配信には複数時間先の予報値が含まれます。ArcClimateの基本データセットでは、なるべく新しい予報値を使用するため、気温・湿度・気圧・風などの時点値について、各配信の0〜2時間予報を接続します。日射量と降水量は0時間予報が存在しないため、1〜3時間予報を接続します。
「予報」なのに過去のデータ?
MSMは天気予報のモデルですが、ArcClimateが使うのは過去に配信された予報の記録です。各時刻について、その直近に配信された予報(0〜2時間先)をつなぐことで、当時の実際に近い連続データにします。
4.2 MSMに直接含まれない値を作る
| 気象要素 | 主な作成方法 | 作成段階 |
|---|---|---|
| 重量絶対湿度 | 気温・相対湿度・気圧から算出 | データ生成 |
| 推計日射量 | 上層・中層・下層雲量、エアマス、気温、相対湿度による回帰式 | データ生成 |
| 下向き大気放射量 | 快晴時放射(気温・露点による)×雲量・水蒸気圧による補正 | データ生成 |
| 直達・天空日射量 | 水平面全天日射量を直散分離(既定: Perez法) | 空間補間 |
| 夜間放射量 | 外気温相当の黒体放射 − 下向き大気放射 | 空間補間 |
| 風速・風向 | U・V成分から再計算 | 空間補間 |
「データ生成」の各値は、MSM GPVから気象データを整備する段階(grib2-to-csv)であらかじめ算出されます。「空間補間」の各値は、指定地点への補間段階(arcclimate-go)で計算されます。
計算式を表示(推計日射量・下向き大気放射量)
推計日射量(水平面全天日射量)
cl:上層・中層・下層の雲量、AM:エアマス、T:気温、RH:相対湿度、I₀:大気外日射量。係数 a〜g はエアマスと全雲量の区分ごとに coef_rad_20210125 から選択されます。
下向き大気放射量
Ldf は快晴時の下向き放射(x は露点温度から定まる項)、C は雲量補正係数(下層・上中層雲量、水蒸気圧、降水の有無で変化。係数は coef_arad_20210125)。
4.3 指定地点を囲む4格子点を選ぶ
ArcClimateは、指定地点を囲む約5km間隔のMSM格子点4点(南西・南東・北西・北東)を使用します。各点について、指定地点までの距離と標高差を求めます。
4.4 標高差を補正する
気温、気圧、重量絶対湿度は標高の影響を受けるため、各MSM格子点の標高から指定地点の標高へ補正します。気温は次の式で補正します。
例
MSM格子点標高 50m、指定地点標高 350m(標高差 300m)のとき
20.0℃ − 0.0065 × 300 = 18.05℃
重量絶対湿度は、補正後の温度・気圧に対する飽和量を上回らないように処理します。
計算式を表示(気圧の標高補正)
Δh:標高差[m]、T:補正後の気温[℃]。指定地点の標高は国土地理院の標高APIから取得します(取得できない場合は3次メッシュ=約1km四方の区画の平均標高を使用)。
4.5 距離に応じて空間補間する
指定地点に近いMSM格子点ほど影響を大きくする、距離の逆数による加重平均を行います。
距離は単純な緯度・経度差ではなく、地球を回転楕円体(GRS80)として扱うVincenty法(地球の丸みを考えて2点間の距離を正確に測る方法)で算出します。風は風向角を直接平均せず、東西・南北のベクトル成分を補間した後に風速・風向へ戻します(3.4 風を参照)。