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5. EA方式による標準年

EAは拡張アメダス(Expanded AMeDAS)の略で、代表的な1年分の気象データ(標準年)を作る方法の呼び名です。この章では、複数年の中から月ごとに「その月らしい年」を選び、貼り合わせて標準年を作る手順を説明します。

5.1 標準年は「各時刻の平均」ではありません

ArcClimateの標準年は、複数年の同じ日時の値を平均して作るものではありません。1月から12月まで、それぞれの月について対象期間を代表する年を選び、12か月を接合して仮想的な1年間を作ります。

標準年は月ごとに別の年を接合
1月2018年
2月2014年
3月2021年
4月2016年
5月2013年
6月2019年
7月2012年
8月2020年
9月2015年
10月2017年
11月2011年
12月2022年
標準年(仮想の1年・出力年は1970年)

12か月をそれぞれ別の年から選び、接合して1年分にします(年の割り当ては一例)。

標準年は、特定の実在年ではありません。月ごとに異なる年のデータから構成されます。

5.2 代表月は何を基準に選ぶか

ArcClimateでは、次の5要素を用いて候補年を判定します:気温/水平面全天日射量/重量絶対湿度/降水量/風速。評価は、次の二つの観点で行います。

σ(シグマ)とは?
σは標準偏差、つまり「値のばらつきの大きさ」を表す統計の指標です。1.0σ以内とは、平均から見ておおむね“ふつうの範囲”に収まっている、という意味です。年ごとの差が出やすくばらつきの大きい降水量と風速は、少しゆるめの1.5σ以内で判定します。

① 月平均値が長期間の傾向に近いか

候補年月の月平均値が、その月の長期間平均から大きく外れていないかを確認します。

要素判定範囲
気温1.0σ以内
日射量1.0σ以内
重量絶対湿度1.0σ以内
降水量1.5σ以内
風速1.5σ以内

② 日々の分布が長期間の分布に近いか

月平均が同じでも、毎日ほぼ同じ月と、極端な日が混在する月では、建物の熱応答は異なります。そこで、日平均値の累積度数分布を比較し、Finkelstein–Schafer統計量(FS値)によって日々の分布の近さを評価します。

累積度数分布とは、値を小さい順に並べて「その値以下が全体の何割か」を積み上げたグラフです。FS値は、長期間の分布と候補年の分布の差の大きさを表し、小さいほど2つの分布が近いことを意味します。FS値の判定にも、月平均値と同じσの倍率(気温・日射量・重量絶対湿度は1.0σ、降水量・風速は1.5σ)を適用します。

FS値:累積分布の比較
1.00.0 気象要素(小 → 大) 長期間の分布 候補年の分布

2つの分布の差が小さいほど、代表的な月に近いと判断します。

5.3 候補年を順番に絞り込む

次の順序で判定し、候補が1年になるまで絞り込みます。

候補年の絞り込み
すべての候補年
① 月平均で判定
気温 → 日射量 → 絶対湿度 → 降水量 → 風速
② FS値で判定
気温 → 日射量 → 絶対湿度 → 降水量 → 風速
代表年

同じ5要素を、月平均 → FS値の順に適用し、候補が1年になるまで絞り込みます。

最後まで複数年が残る場合、または途中で条件を満たす候補がなくなる場合は、残った候補のうち気温の月平均偏差が最も小さい年を優先します。

候補年気温平均日射平均湿度平均気温FS結果
2018採用
2019×除外
2020×除外

5.4 月と月の境界を滑らかにつなぐ

異なる年から選んだ月をそのまま接合すると、月末と翌月初めで気温などが不連続になることがあります。ArcClimateでは、代表年が切り替わる月境界について、前月末18時から翌月1日6時までの13時間を線形に混合します。

時刻前月側の比率翌月側の比率
18:001.000.00
19:000.920.08
05:000.080.92
06:000.001.00

風速・風向は、東西・南北成分を混合した後に再計算します。2月29日は除外し、365日・8760時間の標準年とします。出力上の年は、実在年ではないことを示す仮想年として1970年を使用します。

5.5 推計日射量とMSM日射量

標準年の代表月選定に使用する水平面全天日射量は、次の2種類から選べます。

推計日射量を使用

  • MSM日射量が存在しない期間を含められる
  • より長い候補期間から標準年を作成できる
  • 雲量・気温・湿度・太陽位置などによる推計値

MSM日射量を使用

  • MSMが提供する下向き短波放射を使用
  • 完全な年として扱えるのは2018年以降
  • 選定に使用できる候補年数が少なくなる場合がある

現在の建築設計用気象データサービスでは、推計日射量を用いた標準年を既定で提供しています。選択肢の提供状況はサービス上の表示に従ってください。